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Vol.7 殺人現場のハウスクリーニング 2004.12.01
1. ハウスクリーニングの技術は高レベル
ハウスクリーニングほど高度な技術の必要な業種はない。その反面家庭の主婦以下のレベルの業者も多い。最近は公的権限の民間への委譲が盛んになりハウスクリーニングの技術講習会は公的なものから私的なものまで各種のセミナーが行われている。しかし多少の経験のある人であれば当たり前の内容しか教えないカリキュラムや販売業者が主催する自社商品の売り込みが目的のセミナー、公的資格を販売するだけの講習でテキストの内容が古くメーカー資料の引き写しを使用しているだけのセミナーもある。今後はいかに高度な技術を教えられるかによりこれらセミナーも評価される時代である。ハウスクリーニングの技術のルーツは手工芸の補修技術の集積であり、その1部のしみぬき技術は江戸時代初期に染み抜き技術のテキストがあることからも知られる。ビルクリーニングと比べても対象素材が桁違いに多い、技術の流れについても白木のあく抜きの場合も@蓚酸、苛性ソーダ法A高濃度過酸化水素2液法、弗酸処理法。の2つの流れがある。A劇毒物を使用する方法は戦後からフランチャイジーで流行した技法であり、@は江戸時代のあくあらいにルーツがある。ハウスクリーニングの基礎技術である木工、鋳物、板金、染色などの補修技術が失われている東京大田区の実情がビル新聞提言覧に記載されている。
2. 殺人現場のハウスクリーニング
ハウスクリーニングはビルクリーニングと比較にならない事例に出会うことが多い。それは人間の生活に密着した部分に立ち入るからであり、ビルクリーニングではそこに働く人々は仕事の場であり人々の建前の部分が見えるからであろう。
最近やけに殺人事件が多い。月に10件程度は起きている。そのうち室内が半分としても、5件は現場清掃が必要である。そしてかなりの部分がハウスクリーニングに関係してくるとなれば殺人事件のハウスクリーニングマニュアルも存在しても不思議ではない。押入れなどの死体の放置は引渡し清掃のハウスクリーニング業者による発見が多いのも事実である。
これについて筆者の経験からハウスクリーニングの技術面を通して殺人現場のハウスクリーニングを考えて見たい。
ひとつは10年ほど前に世田谷での事件で若い男女が空き部屋に入り込みベランダ伝いに隣の部屋に入り男性を刺し殺し金品を奪い逃げたという事件であった。部屋は2DKで南向き10畳の木床の部屋の上にはしごでベットに上がる構造であり、北向きにキッチンと浴室、トイレ、玄関がある構造である。まだ新しいためできるだけ張替えを行いたくないというのがオーナーの希望である。
(1) ルミノール反応
まず心配していた血液は10畳の木床の上の血溜りだけであり、木が塗装されて水性ワックスがかかっていたため板状に剥がれてきた。問題になったのはルミノール反応と指紋検出のアルミ粉である。ルミノール反応は血液とルミノールが反応してブラックライトで光る性質を利用して古い血液の付着を確認する手法である。洗浄法は警察では教えてくれないため、試薬メーカーに問い合わせて苛性カリと過酸化水素を使用することだけ教えてもらい後は手探りで洗浄した。ところがこれが落ちないのである。昼間はわからないが、夜蛍光灯をつけると光り出す。結局繰り返し洗浄で徐々に薄くなるのを待つ以外なかった。それにも増して落ちないのが指紋検出用銀粉である。これがルミノールどころではなく頑固である。ただのアルミ微粉が何度ふきあげても落ちなかった。分子間接合力(ファンデルワースの力のすごさを見せ付けられた。樹脂ワックスもおなじ原理であるはずなのになぜ密着不良が起きるのだろうか。後に指紋検出用のアルミ粉のわが国唯一の製造メーカーが世田谷にあることを知った。
(2) 臭い
次は都内のラブホテルで女性が殺され、ベットの下に1週間ほど入れられて発見された事例である。すさまじい臭いである。マスクをしていても息ができない、死体は無いはずであるが室内に臭いの元がある感じである。カーぺットクリーニングでもペットの臭いは難物である。良いテスト現場であるから、ほとんどの消臭剤をテストしたが全て効果なしである。わずかにマスキング剤が有効であった。いまだにトイレの臭いでマスキング法がなくならないのもうなずける。有効な臭い消しは未だに存在しないということである。最良の手段は臭いの元を取り去り、清掃することである。敷いてあるカーぺットの上から酢酸をまき、次亜塩素酸ナトリウムの原液を散布その上にシートをかけ窓を開け1日置いた。その結果何とか臭いは薄れてきた。この方法は危険な方法である。カビキラーに酸性洗剤を混ぜる方法である。これにより発生する塩素ガスは最強力な酸化剤であり、第1次大戦で使用された毒ガスである。危ないものは良く落ちるの事例である。なお赤いカーぺットは変色しなかったところからタフトはアクリルかポリプロピレンであろう。また高濃度過酸化水素もかなり効果がある。石材のしみぬきに販売されているA液は高濃度過酸化水素、B液はアルカリ洗剤である。塩素の場合は危険混ぜるな、酸であるが、過酸化水素では混ぜるな、アルカリである。よくの現場の人がこの薬品を使い皮膚が白くなり痛みを感じているが、手袋とワセリンは必ず使用されたい。
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写真:
過酸化水素は指に付くとやけを生じる。
危険な洗剤を使用する場合はその性質を良く知り、
自己責任で行うことである。
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